中国●女性と文化「広告映像文化と女性たち」 第1回東アジア女性フォーラム                                    広告映像文化と女性たち Wu Jie   世界経済の発展の結果、広告メディアが注目されはじめた。快適な文化、豊かな経済に代表される生活を享受するようになると、人々は広告を情報伝達手段にするようになった。そして早いリズムが近代生活の特長だ。このようにして人々が広告を、互いの情報交換の場として重視する。  広告メディアは文化的現象と言える。私たちがいたる所で注目する広告とは我々に、どうしたら恰好良く、自信に満ち、仕事がよくできて充実感を得、人を愛し、結婚生活を送り、貯蓄を上手にして株や投資ができるか等を教えてくれる。私たちが直面している問題は私たちの文化が、宣伝されているということだ。好むと好まざるとに拘らず、日夜広告に洗脳される私たちだ。広告文文化が伝統的価値観をはじめ、私たちの信念、規範性、道徳、価値、行動と習慣をも知らぬ間に変えて行く。  近年、女性が広告映像文化の中で目立つようになり、それと同時に広告が女性向けになって来たと言える。しかしながら女性たちの良い手助けとなる広告を提供しているのだろうか。実際には、洪水のような広告映像文化の前で多くの女性は途方に暮れている。  広告は女性たちに明日という未来を語りかけている。しかし、女性たちの経験してきた昨日や今日からかけ離れて明日があるのではない。現実のアジア、特に長く農業文化を存続している東アジア地域に国々が昨日と明日をつなぐ今日の女性たちに対し、孔子の教義の骨子をなしている封建的父系社会が立ちはだかっている。  広大な農村地帯に巨大な数の人間がそして女性が生活している。女性たちは国力の発展に重要な役割を果たし、農業生産の60〜90%を担っている。彼女たちは雇用労働力として質・量と共に大きな部分を占めている。数多くの女性たちが、非伝統的分野で働き、科学技術の新知識を以て社会の進歩に貢献している。女性全体としては、開発の全ての局面への参加、経営と意思決定への参加、開発の受益者としての権利の保障を要求している。  国家発展のプロセスに女性をとり入れることについて、女性たちは未だに封建主義文化が押し付けてくる偏見と闘っている。と同時に各国の伝統的文化価値の継承と保全、社会の進歩と女性の向上を目指す価値を創造しようとするとき、女性の指針となるように新しく進歩的で、健全なアイディアを受け入れるよう期待されている。  残念なことに、以上挙げたことがらに対して、私たちを取り巻く広告界は怠慢であるとしか思えない。偏見に満ちた、誤った映像を彼らは伝えている。 1.女性たちの伝統的役割が強調されている  アジアの多くの国々で儒教が支配的であったが、その骨子は「男は常に女より優位」であり、このことが農村地帯の社会および家族生活の中で守られてきた。女は男に依存し、女は「結婚前は父親に従い、結婚後は夫に従い、夫の死後は息子に従う」という因習に従った時のみ誉めそやされる。女性たちは家庭に入り良妻賢母となることが求められる。女性に強制されたこのような概念規範がもたらす圧力に、女性たちは地位向上を図る上で未だに闘っている。  家庭電化製品、食品、日用科学品等の広告を調べて見ると、女性が再び家庭的な良妻賢母の型通りの役割を負わされてことに気がつく。近代的なオフィスでさっそうとした身装で働く秘書の女性たちも、仕事の中では伝統的な女性の役割に留まっていることを見る人に強く印象付ける。  一つの例をあげると、新式の電気通信機器を紹介する広告の場合によく登場するのは、男性が大会社の管理職や経営者であって通信機器を駆使して相手と仕事を進め、業績を延ばしていく様子が示される一方、女性はそういう男性の妻として、家事を済ませた後、或いは出産を控えて病院から「あなた、待っているわ」と呼ぶために使う。あからさまに新しい電気通信機器が必要なのは、男性の場合はビジネスの為、女性の場合は心理的生理的理由の為とされている。何という性差であろう。こういう広告は、女性の伝統的役割を推し進めているということ以外ありえない。 2.農村女性の需要を無視する  国家の工業的発展の過程で、アジアの国々では男性労働者が農村から都会へと職を求めての大移動が起こった。残された女性たちは農業生産の60〜90%を担わねばならない。このように重要な女性の役割の変化を広告は映し出していない。農業に関した広告、例えばその中で苗種、科学肥料、殺虫剤、貯蔵、出荷等の広告の中に女性が登場するものは滅多にないし、女性を受け手に想定したものもない。実際農作業をする女性に対して、人畜に害を及ぼさない正しい殺虫剤の使い方や、土壌や環境を損わない肥料や化学製品の使い方を知らせることは大変重要だ。数百万人におよぶ農村女性の需要は恐ろしく無視されている。 3.セックスシンボルとして用いられる女性  元来、性に対する認識が西洋とアジアでは違う。西洋の人たちは性に対しよりオープンで大胆だ。一方、アジアにおいては比較的性に対しもっと真面目ではっきり口にしない。アジアの多くの国では、広告は西洋のもので、異質である。つまり、西洋の広告では、女性はセックスシンボルとして扱われその悪影響を西洋諸国の人々や女性から批判されている。ところがアジアでは、女性がセックスシンボルとして氾濫するようになった。雑誌のカバーガールやカレンダー、本、ショウ−ウインド−で媚びを振りまく美女は露出度が増えている。性的アピ−ルのある女性を使うと利益に繋がるのかショッピング・バッグにまで利用されている。また、テレビ、ファッション・ショーでは、美人のモデルが挑発的なポーズを取っている。  東洋の女性は、親切心、勤勉、根気強さ、面倒見の良さ、真面目等で知られている。これらの美点は伝統的価値として何世代にもわたって継承された。これは自尊、自信、自強自立を重んじる近代女性の核になっている。4つの「自主」の精神に支えられて、女性は、男性と共に発展を目指す受益者となる。その折に女性をセックスシンボルとして打ち出すのは、人間性の堕落であり女性をおとしめるものだ。  目下、アジアの国々では、国家発展のスピードを速めようと努力しているが、それが広告情報文化の急成長に弾みを付けている。広告を通して伝えられる文化によって、女性に肯定的な影響を与える為に次の提案をする。 1. 政府機関、非政府機関と女性団体は、女性の向上に役立つ広告を推進するよう、手を携えて協力する。 2. 社会学と女性学を現在ある芸術学部に統合し、科目として確立する。そして将来は、向上の為に闘っている女性の姿を描くような広告芸術家のチ−ムを誕生させる。 3. 全国的または地域的レベルでの世論調査で評価し、賞を与えることによって、良い女性の描き方をした広告を他の人たちの手本として示す。 4. 女性を醜悪に描いたり、女性差別を助長するような広告を禁止する。